2017年2月5日更新

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性同一性障害が手術なしでの性別変更に対する私の思い

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

はじめに

日本ではGID特例法というものがあり、戸籍の性別変更が可能です。
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

その中に「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」という条件があります。
つまり、FTMなら内摘(子宮卵巣摘出)が必要ということを示し、手術が必須ということです。
この問題について、手術をしないで性別変更を求める裁判が、FTM当事者によって申し立てされています。
手術なしの性別変更に対しては、GID非当事者はもとより、当事者の中にも反対する声はあります。
しかし、私は基本的に手術なしの性別変更に賛成です。
これについて、今回は書いてみたいと思います。

手術の困難とリスク

性別変更に必須とされている手術を受けるのに様々な困難があることは、当事者であれば実感していることでしょう。
ここで、この問題を簡潔に指摘している吉野靫氏の文章を引用します。

「特例法は、極めて難易度の高い手術を自費で行うことを課し、身体のあり方を限定するだけでなく、手術を行ったルートによってはアフターフォローも期待できないという状態の当事者を生み出した。命をかけさせる制度である。」
(吉野靫「砦を去ることなかれ 繰り返し、忘れえぬ爪痕に抗して」『現代思想』2015年10月号p160青土社)

この文章から、4つの問題点が浮かび上がります。

1、手術は難易度が高い

FTMに必要な内摘に関しては、技術的に手術そのものの難易度がとくに高いものではありません。ただ、吉野氏は、内摘から数年後に急激に体調が悪化したFTMの例を挙げています。手術は体に負担を与え、リスクは避けられないものです。
また、「手術を受けるための難易度」という解釈もできるでしょう。日本でのいわゆる「正規ルート」は限られていて、順番待ちの状況です。そのような中で、手術のためにタイに行かなければならないという当事者は多いです。

2、手術は保険が効かず自費である

精神科段階以外の治療は自費であるため、医療費が高額になります。これも、タイを選ぶ当事者が多い一つの理由だといえるでしょう。
性別変更以前の段階では、GIDは就職が難しい現状があります。就職していても、手術となれば長期の休みを取らなければなりません。アルバイトの当事者も多いです。
収入を得るのが難しい中、手術費を貯めるのが困難、時間がかかるという問題があります。

3、身体のあり方を限定する

当事者の中には、手術を必要としない人もいます。
手術をしなくても、そこまでの苦痛がないなら、あえてリスクのある手術はしないほうがいいでしょう。
しかし、特例法では手術が求められているため、戸籍変更のために、必要のない手術を受ける当事者もいます。
それなら、性別変更をしなければいいのではないかと思われるかもしれません。しかし、それでは結婚もできません。また、書類に戸籍の性別が記載されることによるアウティングの危険、つねに望まぬ性別を突き付けられる精神的負担は相当なものです。

4、ルートによってはアフターフォローが期待できない

タイで手術を受ける当事者が多いことはすでに述べました。
この場合、後で手術した部分に関して異常が起こっても、国内で治療が受けられない可能性があります。
そのような問題に関わりたくない医師が多いからです。
また、尿道延長など、特殊な処置もしていた場合、そもそもやり方がわからないというケースもあります。

手術が不可能な人もいる

上記で挙げたのは、手術が困難であるということでした。
しかし、困難どころか不可能な人もいます。
病気がある、高齢であるなど、体調の問題によっては手術が受けられません。
このような人たちは、現行の制度では性別変更の可能性が完全に絶たれてしまいます。

世界の状況

ここで世界に目を向けてみましょう。
まず、LGBTと性分化疾患の人の人権を保証するための原則として有名な、ジョグジャカルタ原則を見てみます。
ジョグジャカルタ原則wikipedia

2006年に採択されたこの原則は、第3原則で、法的性別変更の条件に手術は必須とされないとしています。
さらにWHOが2014年に、「強制・強要された、または不本意な断種手術の廃絶を求める共同声明」を発表しています。

(Eliminating forced, coercive and otherwise involuntary sterilization – An interagency statement)

つまりここでは、トランスジェンダーの性別変更の要件として、断種、つまり性別適合手術を課すことを人権侵害だとみなしています。
また、手術なしでの性別変更が認められる国は、日本を除くG7国(アメリカは一部の州)、アルゼンチン、ノルウェー、オランダなどがあげられます。

おわりに

ここまで私は、手術なしでの性別変更について賛同の立場から述べてきました。
しかし、反対する人々の意見の中で、無視することができないと思えるものもあります。
それはたとえば、未手術で銭湯に入る場合や、生殖に関わる問題などです。
他にも私が思いつかない、いろいろな問題があるはずです。
このような問題に対し、諸外国ではどう対処しているかを調べ、参考にするという方法があるでしょう。そして、考えられる問題点や、当事者の意見や状況などを検討し、議論することも必要です。
ただ、そのような議論などを行っている間も、当事者の命・人生は1分1秒と削られていくということを忘れてはいけないと思います。

 

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熊野海斗

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戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

*記事は各ライター個人の体験談や考えでありGID当事者全員の考えを表しているものではありません。
またその内容によって特定のセクシャリティーを差別するものではありません。
*治療などの医療行為は医師にご相談ください。

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