2017年1月27日更新

FTM・FTX体験談

10代の性同一性障害の方へ。両親へのカミングアウトについて

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

今回は、とくに10代の性同一性障害の方に向けて、両親へのカミングアウトについて語ります。
「あなた」という、10代の聞き手を想定し、書くという方法をとります。

 

まずはじめに、いちばん覚えておいてほしいことがあります。
カミングアウトをするかどうか、いつどのようにするかということは、あなたが自分の力で決めることです。他人がどうこう言ったり、ましてや決めることなどできません。
理由は2つあります。
1つめは、それぞれの人によって、状況が違うからです。もともと、親との関係が良い人もいますし、悪い人もいます。ご両親が、性同一性障害というものをよく知っているか、差別的なことをふだんから言っているか、そういうことも関わってきますよね。その違いを無視して、カミングアウトのやり方を同じように考えることはできません。
2つめの理由は、カミングアウトの結果、起こったことの責任をとるのは、あなただからです。アドバイスした他人は、何の責任もとってくれません。だから私はあなたに、カミングアウトをすすめることも、やめなさいと言うこともしません。具体的にどのようにしなさいとも言いません。
代わりに、2つの話をします。カミングアウトがうまくいった場合と、うまくいかなかった場合の話です。

1、カミングアウトは少しずつ進むもの

両親へのカミングアウトがうまくいった人を、何人か見ました。
そのうちの一人は、お母さんがジェンダークリニックや、当事者のグループに付き添ってくれています。二次性徴抑制ホルモンの治療も、始めることができています。
とくに、病院での治療をうけたい人にとっては、親の協力が得られれば、とても大きなメリットがあります。
しかし、うまくいった場合でも、1度で、すぐにうまくいくかというと、そうでもありません。
私も、カミングアウトは最終的にうまくいきましたが、うまくいくまでに、数年かかりました。
カミングアウトのあと、親との関係がぎこちなくなったり、避けられるように感じたり、会話が少なくなったり。そういうことはよくあります。
ここで、「受け入れられなかった」と、すぐに決めつけることはやめてください。
あとになってから、親の話を聞くと、そのときは受け入れるための準備をしていたということがわかります。
親にとっても、予想外のことだったり、びっくりしたりして、受け入れる期間が必要だったのです。また、余計なことを言って、子どもを傷つけてしまわないかと、逆に思いやりの気持ちから、避けていることもあります。
このような場合、親も受け入れたい、理解したいと思ってくれているので、時間をかければたいていはうまくいきます。
そのために、性同一性障害のことや、LGBTのことを、たくさん知っておくことが役に立ちます。親は、性同一性障害の治療や、そのことで子どもが差別されないかなど、不安に思っているかもしれません。また、そもそも性同一性障害とは何か、よくわかっていないかもしれません。それを、きちんと説明できれば、理解してもらうことにつながります。

2、うまくいかなかったときには

カミングアウトがうまくいかない場合もあります。
両親にカミングアウトをしても、うまくいきそうにない。そんな予想があったとしても、あなたには、カミングアウトをせまられる事情があったのかもしれません。
それは、医療を受けたいということ。あるいは、制服などの学校の問題。他にもあるかもしれません。
10代のGID当事者には、カミングアウトをするかどうか、どのようにするか、そんなことを考えている余裕などない場合が多くあると、私は思っています。
あまりの苦しみに耐えられない、少しでも苦痛から逃げたい、自殺という選択を避けたい。そのような思いの、いわば爆発のようなものが、両親へのカミングアウトだと。
なので、カミングアウトがうまくいかなかったとしても、あなたは何も悪くないし、その選択も間違っていなかったと私は言いたい。むしろ、それは選択ですらなく、生きるためにとらなくてはならなかった唯一の手段なのだとも思います。
ここで、10代で親にカミングアウトすべきではない、しないほうがよかったのに、という人の意見を見てみましょう。
「あと数年待てば、親の許可がなくても、治療ができる」
その数年が、10代のあなたにとって、どれほど長く思えることでしょう。
「制服などは、学生時代の間だけ、我慢すればいい」
楽しく過ごせるはずの学生生活を捨て、余計なストレスで勉強に支障が出ることを軽視した意見です。
「親との関係が悪くなったら、進学や生活に困る」
それ以前に、あなたの心が壊れ、生きることすら難しかったのですよね。
無責任な言葉はスルーしましょう。あなたの心を守ってください。
そのための対策をあげておきます。

1、両親以外の誰かに相談する

まわりに、相談できそうな人はいますか。友だちはどうですか、学校の先生は?スクールカウンセラーはいませんか。
誰もいない場合、LGBTに関する電話相談、支援団体などがあります。

NHK福祉ポータルハートネットお役立ち情報

2、寝る

ひきこもって眠り、嵐が過ぎるのを待つという対処法です。
寝ている間は、苦しいことを考えずにすみます。また、疲れているとき、一人で考え込んでしまうときは、物事を悪い方向へ考えてしまいがちになります。
最悪のことを考えたとき、実行する前に、とりあえず眠ってみませんか。休養をとることで、気持ちが変わることもあります。

3、精神科・心療内科

眠ることもできないなら、精神科に行ってみてください。眠れるようになる薬もあります。心を落ち着ける薬もあります。専門のカウンセラーがいるところもあります。ジェンダークリニックに行けるようなら、そこの精神科に行くのがいいかもしれません。精神科治療の範囲なら、とくに親の許可はいりません。

また、精神科の医者は、相性もあります。自分に合わないと思えば、病院を変えていいのです。

 

おわりに

両親へのカミングアウトがうまくいかなかった結果、自ら命を絶ってしまった10代の当事者がいます。
そのことを悲しく思うと同時に、10代の頃の危うい、死に片足を突っ込んでいたかのような、自らの経験を思い出しました。そのときの自分に「生きていればいいことがある」「数年がまんすればいいだけ」「あなたがいなくなれば悲しむ人がいる」といった、大人の言葉がいかに無力だったか。
30代になり、治療や戸籍変更を済ませて、ある程度落ち着いた状態にある私の言葉。それは、10代の私から見れば、あのときの大人たちと同じ、何の意味もないものかもしれません。
それでも、悲しい出来事がこれ以上起きないようにと願い、この文を書きました。10代の若い人が追いつめられることのないように、そして、10代の人を追いつめることのないように。それが私の思いです。

 

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戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

*記事は各ライター個人の体験談や考えでありGID当事者全員の考えを表しているものではありません。
またその内容によって特定のセクシャリティーを差別するものではありません。
*治療などの医療行為は医師にご相談ください。

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