2017年1月17日更新

FTM

FTMが子供を持つ可能性、AID(非配偶者間人工授精)という選択

中学生で自分自身が性同一性障害だと認識した私は、子どもを持つということを考えたことがありませんでした。FTMである自分が出産して母親となるとことは問題外ですが、父親となることも考えていませんでした。手術を受けて男性となっても生殖能力が得られるわけもなく、子どもを持つことは不可能だと思っていたからです。だから、自分が思い浮かべる人生のプランの中に、子どもを持つ、育てるといったことは、一切含まれていませんでした。

 

 しかし、そのことについて考えさせられるきっかけとなったのは、SRS、すなわち性別適合手術を受けたときです。産婦人科の先生に、子宮と卵巣の摘出をしてもらい、手術後の診察を受けました。戸籍の性別変更に必要な書類も作成してもらい、これでおしまいというとき、「もし、子どもを作りたいといったことがあれば、また相談にお越しください」と言われたのです。

 

 このときに私は、「ああ、そういう選択肢も自分にはあるのか」と気付きました。つまりAID(非配偶者間人工授精)です。

 この時点の私は30代で、人工授精といったものも、知ってはいました。だから、FTMであろうと、医療技術的には何らかの方法で子どもが持てる、という知識は持っていました。ただ、それを自分自身のこととして、結びつけられていなかったのです。

 先ほど、中学生の時点で自分を性同一性障害だと認識したと書きました。しかし、性別に違和感を抱いていたのは、物心ついてすぐです。とりわけ、自分自身の妊娠・出産機能に関して、幼い頃から嫌悪感を持っていました。なので、生まれてからずっと、自分が子どもを持つという可能性を排除して生きてきました。始めから、すべてを諦めていたと言ってもいいでしょう。

 人工授精といった技術も、ある程度の年齢になるまで知りませんでしたし、それは不妊の夫婦が利用できるものだと考えてもいました。そもそも、GID特例法は2004年施行ですから、それまでは性別が変えられない、すなわち法律上の結婚ということも考えられなかったことになります。男女が結婚しなければ、子どもをもてるわけがない、そういう考えを持ってもいました。

 今の私は、戸籍の性別変更を済ませているので、相手さえいれば、女性と結婚することができます。その場合、望めば子どもを持てる可能性もあります。AIDがひとつの選択肢になるし、あるいは特別養子縁組という方法も考えられるでしょう。結婚相手の女性に、もともと子どもがいれば、その子を育てるというパターンもあります。

 さて、ここまで、子どもを持つことの可能性について書いてきました。

 しかし、やはり自分が子どもを持つことは、今のところないだろうなと思っています。それは単に、子どもを持つことを望んでいないということもあるし、私は女性ではなく、男性を恋愛対象とするというFTMゲイであるという事情もあります。

 とはいえ、子どもを持てるという可能性があるということは、私にとっても大きく意味があることだと感じます。

 子どもを持つ可能性がない、ということと、可能性はあるがそれを選択しない、ということには違いがあるからです。

 ここで可能性というのは、希望とも言い換えられるかもしれません。

 「GIDだから、絶対に子どもは持てない」。そんな諦めではなく、選択するかどうかは別として、「望めば子どもを得る手段がある」という希望が、GIDの人たち、とくに子どもたちの間に広がればいいと思います。

 

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

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