自分以外のGID当事者と初めて会った時の感想

 
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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

GID当事者のみなさんは、他の当事者の方と会ったことはありますか?
今回は、私が初めて他の当事者と会ったときに感じたことを書いてみます。
その方をAさんとします。Aさんは、自分をMTFだと言っていたので、それを尊重してMTFとここでは書きます。でも、今だったらMTXと表現するかもしれないなと思っています。

Xジェンダーが知られていなかった時代

それは十数年ほど前のことで、私が高校生のときのことです。その頃は、「3年B組金八先生」というドラマの影響もあり、性同一性障害が一般にも知られ始めた時期です。
当時も、FTM・MTFといった言葉、そして同性愛と性同一性障害の違いなどは説明されていました。しかし、Xジェンダーという言葉は聞いた覚えがありません。
Aさんは、たしかに男性の体に嫌悪感を持っていて、女性ホルモン治療やSRSを希望していました。だから自分を性同一性障害だと考え、MTFだと言っていたのです。
しかし、身体的な違和感は大きいものの、社会的に女性として見られるということは、とくに望んでいないようでした。つまり、改名もしなくていいし、学校や職場で男性として扱われても構わないというのです。
Aさんは、「たしかに自分が男性の身体であることはすごく嫌で手術をしたい。でも、自分が女性であるとは思わないし、女性として扱ってもらわなくていい。だけど、それだとMTFといえるのかどうか。

MTFの仲間に入っていくと、それは間違いだ、MTFとはいえないと否定されそうで、入っていけない」というように言っていました。

「心の性」という言葉

私はAさんの存在によって、考え方に大きな影響を受けました。
というのも、その頃の私は、FTMであるからには「男らしく」あらねばならない、という考えにとらわれていたからです。
「FTMとは、体の性は女、心の性は男」という説明を、当時よく聞いていました。
「心の性」という言い方は、現在では問題視されていますね。というのも、自分が望む性ではなく、第三者が客観的に判断できる「心の性別」といえるものが存在するかのように思えるからです。

もともとは「gender identity」なのですから、その解釈は誤りで、「性自認」のほうがよりよい訳でしょう。
つまり、「心の性」といった考え方にとらわれていた私は、不安を感じていました。「自分は男性として生きたいと望んでいる。

でも、自分の中に女性らしい要素もあるのを感じてもいる。もしかしたら、自分の「心」は、男ではないんじゃないか。そんなはずはない。自分は女ではなく男だ、こんなに男らしい行動をしているし……!」といった具合に、「男らしい」行動に駆り立てられていきます。
それなのに、MTFであるはずのAさんは、「女らしい」行動をしていないように見えました。

Aさんと会って得たもの

「心の性とは何なのか、心に性別なんてあるのか。それがよくわからない」とAさんは言いました。
たしかにそうでしょう。それに、GIDの生き方に関して「ありのまま」「自分らしく」といった言葉がよく使われます。

でも、「男らしさ」にとらわれ、自分の中にある「女らしい」気持ちを押し殺すのが、「ありのまま」なのでしょうか。そして、男らしくない、女らしくないといった理由で、他のGIDの人を否定することも、おかしいはずです。
初めて会った当事者がこのようなことを考えさせてくれた人で、また高校生という早い時期に会ったことで、私は良かったと思っています。そのことで私は、無理をして男らしさを誇示したり他のGIDの人を不必要に攻撃したりせず、自分がFTMゲイであることも受け入れられたと思います。

さいごに

私は何人ものGID当事者に会ったことがあります。その中で、会って良かったと思える人は、Aさんのように典型的なGIDではない人です。

男らしさを競ったり、見せびらかすように彼女をいつも連れてきたり、治療の段階によって優劣をつけたり、やたらとFTMで群れたがる人たちは、一緒にいてもあまり得るものがないし、どうもあのノリが苦手です。
Xジェンダーや中性を自称する人、FTMだけど普段は女装していますという人、FTMゲイやバイセクシュアル、性的指向がその時によって変化するという人……。基本的に、そのような人たちの話は興味深く、勉強になると感じます。

 

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