2017年3月28日更新

生活

性同一性障害の受刑者へのホルモン投薬について

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

一度始めたら、継続することが欠かせないGIDのホルモン治療ですが、刑務所に入った場合どうなるのでしょうか。
刑務所に入ったMTF当事者が、ホルモン投与を認められず苦痛を受けたとして、損害賠償を求めたという事例もありました。
この問題について、どう考えればいいのか、私の意見を述べます。

ホルモン停止による健康被害

とくにSRS後の当事者は、ホルモンを停止することが体に負担を与えることを、実感を持って認識しているかと思います。
岡山大学大学院の中塚教授もこのように指摘しています。

岡山大学大学院の中塚幹也教授(GID学会理事長)によれば、性別適合手術後に女性ホルモン投与を受けないと、めまい、不眠症、うつ病、パニック障害、動悸、神経性の胃炎、過敏性腸症候群、過呼吸症候群などの発症リスクが高まると指摘している。性同一性障害の受刑者に適切な医療措置を! ホルモン投与がストップすれば重大な健康被害も

FTMの場合でも、更年期障害の症状や、骨粗鬆症の問題などが出てきます。SRSでは、性ホルモンを作る器官を取り除いてしまうわけなので、ホルモンが不足状態になり、補充しなければいけないということになります。
つまり、健康を守るための必要な医療行為であり、SRS後のホルモン治療は認められるべきだと思います。ただ、こうなるとSRS前の当事者にはホルモン治療は不要だという議論になってしまいますね。

性同一性障害は病気

私はSRS前であっても、性同一性障害の診断を受けていれば、ホルモン治療を開始済み、または必要だとされている受刑者には、投与を認めるべきだと思います。

その理由は、「性同一性障害は病気」だと考える必要があるからです。脱病理化を訴える流れもありますが、私はそれよりも保険適用をして経済的負担を軽減することが重要だと考えているので、「病気」と考えることには賛成です。

受刑者でも医療を受ける権利はあります。「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」によると

第五十六条 刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。

ここで、受刑者がGIDの診断を受け、ホルモン治療を開始しているにも関わらず、刑務所内では認めないとしてしまったらどうなるでしょう。それは、GIDは病気ではないとか、病気であってもその苦痛は大したものでないから治療は必要ないとか、ホルモン投与は必要な治療でなく贅沢なものだ、という解釈になってしまいます。
これは、刑務所の問題だけでなく、GID一般の問題につながります。私はGIDの治療は、苦痛を取り除き健康な生活をするために不可欠なものなので、病気として扱い、保険適用されることを望んでいます。
そう考えるならば、受刑者においても、ホルモン治療は必要な治療として認められるべきという結論になるのではないでしょうか。

受刑者はみんな「悪人」か

GID当事者の中でも、「犯罪を犯して刑務所に入るような人にホルモン治療など必要ない、犯罪を犯すのが悪いのだから」という意見を持っている人もいます。
しかし犯罪というのは、必ずしもその人が「悪人」だから犯すものではありません。
たとえば、精神障害があり家庭内暴力をふるう娘を、何十年も介護し続けた末、殺害し殺人罪になった高齢のお父さんがいました。

同じく高齢となった奥さんに暴力をふるう娘を見て、殺害してしまったようです。
また、老々介護で疲れ切ってパートナーを殺害した人、虐待に耐えかねて親を殺害した子など、必ずしも犯罪を犯すというのはその人が悪人であったからとはいえません。
「自分は絶対犯罪など犯さない」。そう言い切れる人は、恵まれた環境にいるということでしょう。
そして、冤罪の可能性も忘れてはいけないことです。
そのような場合に、受刑者がGIDだったとして、ホルモン治療を認めないことが本当に正しいといえるかどうか考えてみるべきではないでしょうか。

さいごに

一つ付け加えておきたいのは、私は別に犯罪者を優遇しようとか、尊重しようとかいった考えは持っていません。個人的な感情としては、基本的に犯罪者には怒りの感情を持っていて、重い刑罰や酷い処遇にすれば良いのにと思っています。

だから、自分勝手な理由で無差別殺人をしたGIDの人がいたとしたら、刑務所でのホルモン治療を禁止してやればいいと感情的には思います。
でもそれは危険な考えで、いろいろな可能性を想定して、冷静に考えることが必要ではないでしょうか。社会は複雑に物事が関連しているので、「犯罪をしない自分には関係ない、特殊なGIDの人の話」では済まない問題かもしれませんよ。

 

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熊野海斗

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戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

*記事は各ライター個人の体験談や考えでありGID当事者全員の考えを表しているものではありません。
またその内容によって特定のセクシャリティーを差別するものではありません。
*治療などの医療行為は医師にご相談ください。

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