2017年1月27日更新

FTM・FTX体験談

10代での改名。名前を付けてくれた両親の想いと、両親への想い

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

改名をされた当事者の皆さん。そのとき、どう思いましたか。
あるいは、これから改名を考えている方は、それについてどう思いますか。
今回は、それについて、FTMである私の個人的な思いを語ります。
改名をする際、元の名前の一部を、新しい名前に使う方がいます。
また、新しい名前を、両親につけてもらう方がいます。

 

名前というのは、生まれてきたときに、両親が付けるのが一般的です。
性同一性障害で、その名前が望まぬ性のものであるために、改名したいと思う当事者にとっても、それは同じです。
だから、せめて名前の一部だけでも残して、新たな名前にしたいと考えたり。
あるいは、やはり両親の思いがこもった名前を使いたいと思い、新たに付け直してもらうという方法をとるのでしょう。

 

私の元の名前は、明らかに女性のもので、しかもとりわけ女性度が高いような名前でした。
だから私は、この名前をとても嫌っていました。
(男性として生活するのに)不便で、恥ずかしく、嫌悪の対象でした。

 

戸籍の改名に至る前に、通称名の使用を学校で許可され、名簿などの名前が変更されました。
それに伴い、公的でない書類などの名前もすべて変えました。
友達にも、親にも、その名前で呼んでもらうようにしました。
そして、ついに戸籍上の改名が実現します。

 

ここまでの過程で、私が名前について思ったこと、感じていたことは以下の2点しかありません。
前の名前に対する嫌悪。
新しい名前になったことの喜び。

 

私は新しい名前を自分で付けました。
男性の名前であるのは当然で、呼びやすく書きやすく、そしてせっかくなら今風な、かっこいいものを。

 

改名したときは高校生でした。
当時は20歳を過ぎるまで、身体的な治療は一切できません。
二次性徴抑制ホルモンといった選択肢もありません。
情報も、周囲の理解も、今に比べて極端に少ないです。
したがって、10代というのは、私にとって本当に苦しく、暗く、つねに絶望と自殺の衝動と戦っていなければならない時代でした。

 

そのときの私は、自分の苦しみと、それに対抗する術を考えるだけで、精一杯でした。
身体的治療は20歳までできない。戸籍の性別変更は、そもそも法律さえまだない。
そんな中で、改名だけは行うことができました。
改名ができて思ったことは、嬉しいということだけです。

 

それから何年か経って。
20歳になるとすぐ、私はホルモン治療を始め、続いて胸オペをしました。
身体的治療を始めたことと、大学生になって、それまでの私を知らない人も増え、男子学生として生活している中で、苦しいことも減っていきました。少なくとも、高校時代までと比べれば、ずいぶん楽になりました。

 

そんな中で、とつぜん思い出したことがあります。小学5年生のときの記憶です。
自分の名前の由来を親に聞いてくる、という課題が出ました。
今思えば、いろんな家庭があるのだから、そういうのはどうなのか?という課題ですが、本題から外れるので、そこはスルーします。
その課題について、私の親は、こう言ったようです。
「優しい子になるように、やさしい感じの名前にした」
実際にそれを、親が語っているときの記憶はありません。
ただ、私の文字でそう書かれた課題のプリント、それが、記憶から蘇ってきました。

 

正確に言うと、それはそのとき突然蘇ったのでも何でもありません。
いつでもつねに頭の中にあったのです。
私がその名前を嫌い、憎み、早く変えたいと願ったときも。
新しい名前を考え、その名前で呼んでほしいと言い、正式に改名したときも。
課題プリントの文章は、何も言わずにそこにありました。私がそれを見ようとしなかっただけで。
優しい子でいては、やさしい感じでは、戦場のようなあの時代を生きてはいけなかったのです。
それは今もです。

 

私は全然優しい人間ではありません。
冷たいと言われ、きついと言われ、怖いと言われ、それで満足です。
それなのに先日、知り合いの小学生の男の子に、「優しい」と言われてしまいました。
たぶん何かを勘違いしているのでしょう。

 

それでもそのとき、少し嬉しく思いました。

 

私の今の名前には、昔の名前の痕跡はありません。
ただあの課題プリントの文章は、たぶん一生、頭の中から消えないのだろうと思います。

 

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戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

*記事は各ライター個人の体験談や考えでありGID当事者全員の考えを表しているものではありません。
またその内容によって特定のセクシャリティーを差別するものではありません。
*治療などの医療行為は医師にご相談ください。

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