2017年1月14日更新

FTM・FTX体験談

性同一性障害(トランスジェンダー)の私が「女」であることを強いられるようになった「妊娠」と苦悩

突然ですが、私は現在、妊娠9ヶ月です。
戸籍上の性別は女ですが、女であるということに違和感を抱えながら生きている者です。
そういう人間が子供を産むのは変でしょうか。

 

私の持つセクシャリティは、強いて分類するならFTX(生物学的には女性で、性自認は男女どちらでもない)です。女性であることに違和感は持ちつつも、男性になりたいわけではなく、むしろ中性というのが一番しっくりきます。とにかく「女ではないもの」になりたいのです。

 

パートナーはいわゆる「普通」の男性で、私がバイセクシャルということもあって恋愛感情・婚姻関係は問題なく成立しています。
また、仕事も当時は男装で働ける職場だったため、かなり理想的な生活ができていたのではと今では思います。

キッカケは妊娠

そんな私が、ある日を境に「女」であることを強いられるようになりました。そのキッカケが、妊娠です。

子供が欲しいとは思っていました。大切なパートナーとの間にできた「家族」ですから、嬉しいことには変わりません。しかし、その日々はあまりに残酷なのです。

刃物のような女性名詞の数々

「女のひと」「妊婦さん」「お母さん」…
問答無用で突きつけられる、刃物のような女性名詞の数々。
周りの人の〝温かな〟視線と気遣い。
女性的に丸みを帯びゆく身体、日増しに膨らむ腹部。
当然、男装はできなくなりました。鍛え続けてきた筋肉も衰え、自分が何者か分からなくなると、人に会ったり、外に出るのも怖くなりました。

僕は女じゃない

そしてだんだん、胎動する我が子に向かって話しかける自分の姿が、どうやっても母親のそれになりつつあるのを感じるようになりました。
誰が見ても、私は「女」になってしまったのです。

僕は女じゃない。外見なんて関係ないのに。もう死んでしまいたい…。

本格的に性への違和感を抱いたきっかけは「結婚」

私の場合、本格的に性への違和感を抱いたのは、結婚してからのことです。
だから今になって初めて、性同一性障害の人たちが日々どれほどの苦痛を感じながら生きているのかに気付かされた思いです。

アイデンティティの崩壊、というより、リンチと言った方が適切かもしれません。
嵐のような世界のなかで、本当の自分を保てるのは自分自身しかいないのです。それを深く傷つけられるということが、どれほど惨いことなのか。肉体と精神。その両方を引き裂かれる苦しみは、経験しないと決して分からないでしょう。

 

でも。
もし私と同じような境遇にあって、死ぬほど悲しい思いをしている人がいたら、その人には
「おめでとう」
と心から言いたいのです。

 

肉体的な苦痛は、ほんの一時的なものです。子育ては忙しくとてもアクティブですから、すぐに元の身体に戻るでしょう。一生お腹が大きいわけではありません。
ホルモンバランスの崩れている今の状態は、いつもよりずっと脆く、弱っているものです。精神的に負った傷も、人の親として成長する過程で、治癒し、きっと役に立つはずです。
生まれたら、父親として育てたって全然問題ないのです。むしろ、次の世代に多様な価値観を提示することが、私たちの使命でもあるとすら私は考えます。

 

それよりも、今は生まれてくる子供のことだけを考えてください。その喜びは、巡り巡って自分の命を肯定し、祝福することにもなります。
だから、諦めないでください。一緒に頑張りましょう。

あと一ヶ月で、私は子供を産みます。やっと気持ちも落ち着いてきましたが、まだ苦痛を伴い、不安もあります。
ただ、父親(みたいなの)二人で可愛い娘を育てる、という暮らしも悪くないなと想像しつつ、新しい自分の在り方を楽しみにも感じています。

さいごに

こういうケースの人が多いのか少ないのか私には分かりません。
むしろ一般的には、同性カップルや、性別適合手術を受けて結ばれた人たちが「いかに子供をもうけるか(体外受精や代理出産、養子など)」といった問題の方が、深刻であり大多数だと思います。望んだ相手との子供を自分で産めるなんて贅沢だ、と言われる可能性もあります。

 

しかしご存じの通り、性は限りなく多様です。
どんなに少数であれ、私と同じような境遇に立ち、密かに思い悩む人が必ずどこかにいます。
その人たちに、一人じゃない、おかしなことじゃない、大丈夫。と伝えることができれば、私の小さな体験も拙い文章も、意味のあるものになるはずです。

 

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