2017年4月13日更新

FTM・FTX体験談

今までで一番つらかったカミングアウト

カミングアウトをすることは、良い面もありますが、つらい結果を招くこともあります。
悪い結果の代表的なものが、カミングアウトした相手に拒否されることと、言いふらされてアウティングにつながることですね。
今回は、カミングアウトがアウティングにつながった、私の経験を書いてみます。

成功したかのように思えたカミングアウト

FTMの私は、高校生の頃から男子生徒として通学していました。教員や同じクラスの人は、ほとんどが私をGIDだと知っていましたが、学年が違う生徒は知らない人も多くいました。とくに下の学年の人はほぼ知らず、私を男子生徒と思っていました。
そんなとき、仲の良い後輩ができました。その子をAさんとしましょう。一緒に遊びに行ったりすることも増え、私はAさんにカミングアウトすることにしました。
学校には私がGIDであることを知っている人がいて、そこから耳に入らないとも限らず、先に言っておいた方がいいと思ったのです。

また、そのとき私は治療をしていなかったので、プールなどに誘われた場合、断る口実を考えるのも面倒だし、後ろめたい感じが付きまといます。この点が、カミングアウトしておけば楽になります。
そのことで自分を拒絶するような人ではないとわかっていたし、彼女自身も性のことで悩みを抱えているように思えました。性的マイノリティというわけでなく、女性であることによる差別を感じていたのだと思います。

家庭が田舎の保守的な家だったため、お兄さんばかり優遇、期待され、Aさんは放置されているような感じでした。
そういうこともあって、性のことで人を差別したり、拒否したりするような人ではないと思い、カミングアウトしました。
するとその思い通り、Aさんは決して私がGIDであることで拒否的な反応を示したりせず、その後も変わらず男性として接してくれました。

しばらく経ってからのアウティング

それからしばらくは、カミングアウトによって、前より関係が良くなった気がしていました。変に隠さなくてもよくなった分、気持ちが楽でした。
それに変化が起きてきたのは、Aさんに彼氏ができてからです。Aさんは彼氏に夢中、というかむしろ崇拝にも近い感じでした。彼の言うことはなんでも正しく、彼の良いというもの(音楽やマンガなど)はどれも良いと思っていました。
でも私は、その彼氏はどうも好きになれず、彼氏が連れてくる友人も同様でした。彼らはいつも自信満々で、この世のすべてを知っているかのような態度なのです。だから自分の基準を人に押しつけるような言動をよく取りました。たとえば、その場に喘息の人がいても、そこが禁煙の場所でなければ煙草を吸う権利があるとして、構わずに吸ったりする、などです。
今考えれば、彼らは学歴も低く地元から出たこともないため、狭い世界しか知らず、その狭い世界を全世界のように捉えていたから、何でも知っているという自信を持っていたのだと思われます。
私がその彼氏のことを少しでも悪く言おうものなら、Aさんはまさに「ブチギレ」という勢いで怒りました。なので、私はあまり彼氏のことに触れないようにしました。遊ぶ時にも、いつも彼氏やその友達を連れてくるので、自然と距離をとるようになっていきました。
そして決定的となったのが、彼氏へのアウティングでした。その彼氏が、
「女に戻れ。そんな男の格好をしていたら、彼氏もできず、結婚できないから、人生めちゃくちゃになるぞ」
と言ったのです。
私はもちろんその彼氏にカミングアウトしておらず、Aさんが彼氏にアウティングしたのでした。その彼氏が、さらに友人たちにもアウティングします。
そこで私は、Aさんと完全に距離を置くことを決めました。ちょうど私が高校を卒業した頃だったので、メールや電話をとらなければ、完全に連絡は絶たれます。

カミングアウトのリスク

この事件において、いちばん私がつらいと思うのは、アウティングされたこと自体ではありません。私は、人に何らかの秘密を話すことは、相手に秘密を持たせるという負担を強いることだと思います。「誰にも言ってはいけないこと」を、心の中に持ち続けるのって、大変なことだと思いませんか。

よって、相手が秘密を漏らしても、完全に相手を責めることはできないと思っています。
また、彼氏の言葉に傷ついたのでもありません。正直私はあの言葉を聞いて、この人はどこまで頭が悪いのだろうと思いました。

私がAさんと連絡を取らなくなったのは、そのような人たちとの関係を続けるのは時間の無駄であり、会うたびにそのようなことを言われては精神的にも負担になると思ったからです。また最悪の事態として、「女であることを自覚し、女に戻るために」レイプされるなどという可能性も考えられたからです。

このような事態は、海外などでレズビアンを「矯正する」として実際に見られることで、決して考えすぎというものではありません。
けれども、Aさん自体はもともとは私のことを理解してくれ、良い関係性を築けていた相手でした。

それが失われてしまったことが、もっとも悲しくつらいことです。アウティング、そしてそれを導くことになったカミングアウトをしなければ、少なくともAさんとの関係を断ち切るには至らなかったのだろうかとも思えます。

さいごに

カミングアウトはGIDにとって、相手との関係性を深める武器になります。一方で、アウティングの危険を持つ弱点でもあります。
とくに埋没を望む人には、覚悟が必要なことだといえるでしょう。

 

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

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