2017年4月27日更新

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性別欄廃止!?早稲田大学GSセンター発足について

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熊野海斗

熊野海斗

戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

性的マイノリティ学生や、ジェンダー・セクシュアリティに関心のある学生のための「GSセンター」という施設が、早稲田大学にできたそうです。「GS」とは、「Gender and Sexuality」のことです。

早稲田ウィークリー 性的マイノリティ学生を支援「GSセンター」発足、出席簿の性別欄廃止…早大、取り組みを制度化

「LGBT」という言葉には懐疑的な私ですが、この取り組みにはとても関心を持ちました。FTMゲイ当事者という立場から、GSセンターについて書いてみたいと思います。

「LGBT」ではなく、「GS」

そもそも、まずこの取り組みについて、「ん?」と思ったのが、「GSセンター」という名称です。
性的マイノリティ支援というと、まず付けられそうなのが「LGBTセンター」という名前だと思いませんか。
GSセンターのサイトを見ても、LGBTという言葉は基本的に避けられていることがわかります。

カッコつきの「LGBT」が使われていたり、LGBTに関する調査に言及するときなどに限定されたりしています。

早稲田大学GSセンター

なぜLGBTという言葉を避けたのかについては書かれていません。しかし、それによってセンターを利用しやすくなる当事者がいることは確かです。

理由の一つは、セクシュアルマイノリティ当事者には、一般的なL・G・B・Tの枠にはまらない人もいるからです。Xや、迷っている段階の人、あるいは私のようなFTMゲイという場合もそうですね。

もう一つの理由は、「LGBT」という言葉に疑問・不信を持ち始めた人がいるということです。
最近、「LGBT」という言葉はよく聞かれるようになりました。しかしその中に、「LGBTを利用しよう」という考えが透けて見えるものもあります。

「東京オリンピックに向けてLGBTへの理解を深めよう!」というような言葉を聞くたび、「じゃあオリンピックが終わったらどうなるのか」という疑問(あるいは不安)を感じずにはいられないんですが、当事者の皆さんどうですか?

LGBTという言葉を避けることで、そういった当事者も、安心して利用できるかと思います。少なくとも私が早稲田の学生なら、「LGBTセンター」なら警戒しますが、GSセンターは利用するだろうと思います。

充実した資料

冒頭の早稲田ウィークリーの「充実した資料」の写真を見ると、「マンガばっかり?」という印象を受けますが、そういうわけではありません。随時更新される図書リストが公開されています。

図書リスト

これを見ると、やはり「LGBT」センターでなく「GS」センターであることがわかります。つまり、「LGBT」だけでなく、ジェンダー・セクシュアリティに関連する本を幅広く置いているのですね。
これはこのセンターが、性的マイノリティ学生だけでなく、ジェンダー・セクシュアリティに関心のある学生のための施設でもあるからでしょう。

しかし、当事者にとっても、このようなラインナップはとても有益だと思います。
当事者が本を読む場合、まず手に取るのは「LGBT」とタイトルに書かれたものが多いかもしれません。当事者にとって、目の前の問題、医療や法律、あるいは自分は何者なのかという問いに答えてくれるものが、まず必要だからです。
でも「LGBT」の基礎知識を説明した入門本は、要注意だと私は思います。私も何冊も読みましたが、それは「LGBT思想」ともいえるような、ある特定の考え方を書いたものです。

それが「一つの考え方」であるにすぎないと自覚して読めばいいですが、これが「真実」「正しい知識」と思ってしまうのは、危険なことです。

たとえば、「男女を両端にした性自認・性的指向・身体の性の3つの軸があり、それぞれの軸のどこかに自分の性があって、性別はその組み合わせから成っている。このように性は多様です」みたいな説明は、よくあります(性表現を加えた4つの軸の場合もありますね)。

これは性を考えるための1つの道具であり、「絶対的に正しい」ものではありません。これを「正しい」と信じてしまうと、よけいに混乱が深まる場合もあり得ます。
たとえば、私の「性的指向」は、1本の軸では表現できません。「ゲイ」と表現してはいますが、恋愛の対象・性欲の対象・結婚の対象は別だと思います。それらをひとつにして、「性的指向」というものでくくっていること自体、ロマンティック・ラブ・イデオロギーの考え方に基づいたものでしかないといえるでしょう。

そういうわけで、「LGBT思想」に偏らず、性に関わるいろんな知識を得られる点で、GSセンターには充実した資料がそろっていると思います。

アウティングについての考え方

私が最もすばらしいと思ったのはこれです。
「アウティングを避けるために 出席簿から性別欄を削除」したそうです。
すばらしいのは、単に出席簿から性別欄を削除したことではありません。

私が大学に行っていたのは、もう何年も前になりますが、私の大学では出席簿に性別欄などとっくにありませんでした。
すばらしいのは、出席簿の性別欄を「アウティング」と認識していることです。

アウティングが問題になることはよくあり、象徴的なのは一橋大学の事件ですね。多くの場合、カミングアウトされた個人が、それを他の人に話すという文脈で語られます。

でも、GID当事者の立場から言わせてもらえば、そんなことよりも酷いアウティングとは、書類の性別欄です。
カミングアウトについて、当事者の人は「する」方の立場を考えがちですが、「される」方の視点も持つといいと思います。「誰にも言わないで」という秘密を相手に話すこと、それは相手に負担を押しつける行為でもあります。

それを相手がアウティングしたからといって、必ずしも相手だけが悪いとは言い切れないと私は考えます(もちろん相手は全く悪くない、とも言いませんが)。
でも書類の性別欄、とくに出席簿など人の目に触れ、性別欄の必要性も感じられないものによるアウティングは違います。必死で埋没しようとし、誰にもカミングアウトしてなくても、アウティングされてしまうためです。これは当事者には防御のしようもないのです。

(戸籍の性別が変えられるのは20歳以上であり、大学入学時18歳では変更できません。)

 

この問題を重要だと考え、対策をとったということが、とてもすばらしいと思います。

おわりに

最近、セクシュアルマイノリティの学生・生徒に対して、配慮や支援をする学校は増えてきたと感じます。
しかし早稲田大学GSセンターの取り組みは、それにとどまらず「ジェンダー・セクシュアリティ」について、学生なら誰でも学べる場、知ることができる場になっていることが特徴的です。
このような取り組みが、多くの大学に広まればいいと思います。

 

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戸籍変更・SRS(内摘・尿道延長)済の30代FTMゲイです。トランスとしての体験談に加え、FTMゲイという観点から、性指向の問題についても執筆していこうかと思います。

*記事は各ライター個人の体験談や考えでありGID当事者全員の考えを表しているものではありません。
またその内容によって特定のセクシャリティーを差別するものではありません。
*治療などの医療行為は医師にご相談ください。

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